試合開始後9秒での退場劇の余話

4月15日、東京V対鳥栖のJ2での、試合開始後9秒での退場劇は、翌日の16日、スポーツ新聞やTVなどでも取り上げられました。朝のTV番組で報道された内容の中で、少し気になったコメントがありましたのでこの場で確認をしておきたいと思います。
番組の中で、この退場のシーンについてコメントを求められたプロ野球界の”大御所”が「あれはレッドカードなのか?」といった趣旨の発言をしています。
17日の当HPでも書きましたが、あの判定の根拠となるのは、「サッカー競技規則2008/2009」の第12条、〈退場となる反則〉の条項(=36頁)です。
その第5項には「フリーキックまたはペナルティーキックとなる反則で、ゴールに向かっている相手競技者の決定的な得点の機会を阻止する。」とあります。つまり、間接FKになる反則でも、直接FKになる反則でも、PKになる反則でも、反則の内容にかかわらず、「決定的な得点機会の阻止」に値する反則には競技罰(この場合は直接FK)に加えて、「退場」という懲戒罰を適用する、ということです。
あのシーンで主審が判定に至った思考をフローで整理してみましょう

FWが後方から抑えられて倒れた

    
ファウルは存在するので、FWのシミュレーションではない
    
FWがファウルを受けた場面は決定的な得点機会に該当するか
    
該当する。懲戒罰まで必要である
    
直接のゴールイン、アドバンテージの採用を考慮する状況か
    
ゴールインやアドバンテージの採用を考慮する状況ではない
    

笛を吹き、直接FKの方向を指す。同時にレッドカードを示す

このシーンで主審は起こったファウルの質や程度(不用意に、無謀に、過剰な力で)には惑わされず、「著しく不正なファウルプレー」の事象とは区別し、瞬時に頭の中で状況を整理して、「退場」という懲戒罰を下していることが分かると思います。このように、理論に沿って思考が働いてこそ、瞬時の判定が可能になります。サッカーのレフェリングには「慣れ」や「経験」といった要素も当然必要です。しかし、判定に至るフローというものが頭の中で常に整理されていることが、自信のある判定、そして判定の精度にもつながってくるのです。
今回の場面の競技規則上の解釈には、最新の競技規則121頁得点、または得点の機会の阻止」の項目を参照し、今後の活動の一助として下さい。