Jリーグ開幕戦のPKに関して 1/2

3月6日、2010年度のJリーグが開幕しました。
第1節のJ1の試合の中で、広島対清水戦の”トリックPK”が大きな話題となりました。週明けにはJFAの松崎審判委員長から事態の報告があり、3月10日にはJリーグの公式ホームページに、ニュースリリースが掲載されました。当日の事象の詳細、正しい再開方法を皆さんもご確認ください。
競技規則・第14条ペナルティーキックの条項40頁も参照して下さい。


J1の開幕戦の一つであるこの試合を担当した岡部拓人主審は、2004年に開講したJFAレフェリーカレッジの2期生で、競技規則の精神まで整理して指導を受けた若くて有能な審判員です。競技規則の内容を把握していなかった訳ではありません。筆記試験でなら、競技規則の適用方法を間違うことはなかったはずです。
「おかしいなとは思ったが、相手チームの選手も何も言わなかったので…」という彼の正直なコメントも出ていましたが、やはり机上の知識と現場での適用は別物、ということなのでしょう。体力的に厳しい時間帯でも、非常に難しい判定の直後であっても、また競技者から疑義が出なかったとしても、審判チームとしてゲームを正しい方向へ導く必要がありました。
あのケースでは、広島の得点を認めた後に清水のキックオフが行われるまでは「主審は、その直前の決定が正しくないことに気付いたとき、または主審の裁量によって副審または第4の審判員の助言を採用」(競技規則・第5条主審の条項22頁を参照)して得点の決定を変えることが可能でした。主審自身に不安があったのなら、副審とアイコンタクトを取りながら、今一度冷静になる。PKを監視した副審も躊躇することなく主審にはっきりと自分の考えを伝える方法を考えるべきでした。
この試合直後のインタビューで、PKを決めた広島の佐藤選手は「この(トリック)キックはしばらくは使えない」とコメントしたそうです。当日の夜のTVスポーツ番組でも競技規則に違反していると指摘した番組はほとんどありませんでした。トップレベルの競技者、指導者、マスコミ関係者の多くも正確に競技規則を把握している訳ではない、という事実が露呈したエピソードでもありました。
誤審云々の話の前に、国内でサッカーに携わる立場の人間全員がこうした現状を省みる良い機会にすべきだと思います。同時に、岡部主審が委員会の研修を経て、近いうちに我々の前に一回り成長した姿を見せてくれることを私は切に望んでいます。